介護を受ける立場になったら知っておきたいこと｜サービスや制度、気持ちのケアまでやさしく紹

はじめに将来、自分や家族が「介護を受ける立場」になる可能性は誰にでもあります。そのときにあわてず、安心して生活を続けていくためには、今から少しずつ知識を持っておくことが大切です。この記事では、介護を受けるときに大切な「気持ちの変化」「日常の工夫」「利用できるサービス」「制度のしくみ」「家族や地域の支え」「相談できる場所」について、やさしくわかりやすく解説していきます。

介護を受けるときの気持ちと向き合い方実際に介護を受けている人の話を聞いてみると、「最初はどうしていいかわからなかった」「自分にできないことが増えて落ち込んだ」といった声が多く聞かれます。一方で、家族や地域の人に相談したことで前向きになれた、安心できたという声もあります。家族のサポートは心強いですよね。

たとえば、病気が進んで自宅での生活が難しくなり、施設に入ることを選んだ人。また、地域の相談窓口に助けを求めて、訪問介護を利用しながら住み慣れた家での暮らしを続けている人など、さまざまな体験があります。そうした事例を知ることは、「自分もがんばれる」と思えるきっかけになるでしょう。

日常生活の変化と自立の工夫介護が必要になると、これまで当たり前にできていたことが少しずつ難しくなります。たとえば、歩行、階段の上り下り、食事、入浴、トイレなど、身の回りのことに他人の助けが必要になることがあります。

すべてを他人に任せるのではなく、自分でできることはできるだけ続けることが大切です。朝の身だしなみを整える、簡単な体操をする、好きな趣味に取り組むなど、小さなことでも「自分でできた」と実感することが、自信や前向きな気持ちにつながります。

介護サービスの種類と選び方介護を受けるときには、さまざまなサービスの中から、自分の状態や希望に合ったものを選ぶことができます。主なサービスは以下の3つに分かれます。

● 家で介護を受けたい場合：・訪問介護（ヘルパーが自宅に来て、掃除、食事準備、入浴などを支援）・訪問看護（看護師が体調管理や薬の管理をサポート）・デイサービス（昼間だけ施設に通い、食事や入浴、リハビリなどを受ける）

● 施設で介護を受けたい場合： ・特別養護老人ホームや介護老人保健施設などに入所し、24時間の介護を受ける・リハビリ中心の施設では、歩行練習や筋力トレーニングも可能

● 地域で支えてもらう場合： ・地域密着型サービス（小規模施設、グループホームなど）・小規模多機能型居宅介護（訪問、通所、宿泊を組み合わせて利用）

介護支援専門員（ケアマネジャー）と相談しながら、自分に合ったサービスを選ぶことで、より安心して介護を受けることができます。

介護保険制度とは？ 介護保険制度は、40歳以上の人が加入するしくみで、介護が必要になったときに使える公的な制度です。

● 65歳以上：病気や年齢に関係なく介護サービスを利用できます。● 40～64歳：特定の病気（認知症、脳卒中など）で介護が必要な場合に利用できます。

まずは、市区町村の役所に「要介護認定」の申請をします。専門の調査員による訪問調査や主治医の意見をもとに、「要支援1〜2」「要介護1〜5」に分類され、利用できるサービスや支給される上限金額が決まります。

サービスの利用には費用がかかりますが、自己負担は原則1割（所得に応じて2〜3割）で、残りは介護保険から支払われます。利用できる金額の上限（支給限度額）を超えると、超えた分は全額自己負担になるため注意が必要です。

気持ちを大切にする介護のあり方介護を受けると、「家族に迷惑をかけているのではないか」「自分は役に立たなくなったのでは」といった不安や悲しみを感じることがあります。

そのような気持ちに寄り添い、安心して生活を続けるには、・自分の希望や思いを伝えること・まわりの人が気持ちに配慮しながら接することが大切です。

たとえば、「今日は自分で着替えたい」「好きな時間にお風呂に入りたい」「趣味を続けたい」といった希望を、遠慮せずに周りに伝えることで、より自分らしく過ごすことができます。介護する側も、丁寧な声かけや配慮のある接し方を意識し、相手の尊厳を守ることが大切です。

相談できる窓口を活用しよう 介護に関する悩みや疑問があるときは、一人で抱え込まず、誰かに相談することが大切です。以下のような相談先があります。

・地域包括支援センター：高齢者の暮らし全般に関する相談窓口・ケアマネジャー：介護サービスの利用計画や悩みの相談・市区町村の介護保険窓口：申請や制度についての相談・病院の相談窓口：退院後の生活や医療と介護の連携・電話相談や福祉団体：匿名でも相談可能な窓口もあり

不安や心配があっても、相談することで気持ちが軽くなり、必要な支援へとつながっていきます。

家族と地域の支えが安心につながる介護を受ける人にとって、家族や地域の支えはとても大きな力になります。家族は日常の世話や通院の付き添い、気持ちのケアなど多方面でサポートを行っています。

しかし、家族だけで支え続けるのは大変なことです。介護疲れやストレスをためないためにも、介護サービス、支援制度、地域のボランティアなどをうまく活用していくことが重要です。

地域では、見守り活動や買い物支援など、さまざまな形の助けがあります。家族や地域の人と協力し合いながら、安心して過ごせる環境を整えていきましょう。

おわりに介護を受ける立場になったとき、最も大切なのは「自分らしく生きること」です。

そのためには、・介護保険制度を知っておくこと・困ったときに相談すること・家族や地域と支え合うことがとても大事です。

「できることは自分でやってみる」「わからないことは聞いてみる」「助けてほしいときは声に出す」——この3つを心がけるだけでも、介護が必要な状況でも前向きな気持ちを持ち続けられます。

この記事が、あなたやご家族が安心して介護と向き合うきっかけになれば幸いです。