高校生にもわかるレム睡眠障害の基礎知識と未来の健康とのつながりをやさしく解説

病気

【はじめに】 夜中に突然叫んだり、手足を振り回したりして、夢の中の出来事を実際に行動に移してしまう人がいます。これは「レム睡眠障害(REM睡眠行動障害、略してRBD)という少し珍しい睡眠のトラブルかもしれません。

RBDは、寝ているときの行動が激しくなるだけでなく、将来の重大な脳の病気と深く関係している可能性があることから、早い段階で気づいて対応することが大切です。この記事では、RBDの基礎的な理解から、原因、症状、診断方法、治療、そして将来の見通しまでを、授業を何度か受けた高校生にもわかるよう、できるだけやさしく説明していきます。

【レム睡眠障害とは?】 人は眠っている間、夢を見る「レム睡眠」という時間があります。この時、本来であれば筋肉は弛緩していて、体が動かないように脳がブレーキをかけてくれています。これにより、夢の中で走ったり戦ったりしても、体は安全に静かに眠っていられるのです。

しかし、RBDの人はこの筋肉のブレーキがうまく効かず、夢の中の行動が現実でも表れてしまいます。たとえば、夢の中で戦っていれば本当に手足を動かしたり、叫んだりしてしまい、時にはベッドから落ちてしまったり、周囲の人にけがをさせてしまうこともあります。本人にはその自覚がなく、目が覚めたときに「怖い夢を見ていた」としか思っていないことがほとんどです。

【主な症状】 ・寝ているときに大声で叫んだり、誰かと会話しているように話したりする ・手足をバタバタと動かし、暴れるような行動をとる ・ベッドから落ちたり、壁にぶつかってしまう ・夢の内容を鮮明に覚えていて、話すことができる ・一緒に寝ている人が驚いて起きたり、けがをすることもある

このような行動は、レム睡眠が増える夜の後半、特に明け方近くに起きることが多いです。夢の内容は、戦い、逃走、襲われるなど、強く恐怖を感じるようなものが多く、夢の中での状況がそのまま体の動きに表れてしまいます。

【どうしてレム睡眠障害が起きるの?】 RBDには主に2つの原因があります。

① 原因がはっきりしない特発性RBD このタイプは、他の病気や薬との関係が見つからないもので、RBDの多くがこれにあたります。しかし、特発性RBDの人は、将来パーキンソン病やレビー小体型認知症などの神経の病気になる可能性が高いことがわかっています。つまり、RBDは「将来の脳の病気の最初のサイン」としても重要なのです。

② 他の原因がある二次性RBD 一部の薬(特に抗うつ薬)や脳炎、アルコールの急なやめ方などが原因でRBDが出ることもあります。このタイプでは、原因を取り除けば症状が改善することもあります。

【どうやって診断されるの?】 まず大切なのは、本人だけでなく、一緒に寝ている人の話を聞くことです。なぜなら、本人は寝ている間のことを覚えていないことが多いからです。「夜中に暴れていた」「大声で叫んでいた」といった家族やパートナーの証言が大きなヒントになります。

次に、「睡眠ポリグラフ検査(PSG)」という検査を受けます。これは、睡眠中の脳の動き、眼球運動、筋肉の活動などを機械で記録し、レム睡眠中に筋肉の緊張がなくなっているかどうかを確認するものです。この検査でレム睡眠中に体が動いていれば、RBDと診断される可能性が高くなります。

RBDの治療法とは?】 RBDの治療の目的は、夜間の危険な行動を減らし、患者とその周りの人が安全に眠れるようにすることです。

・寝室の安全対策

  • ベッドの周りにクッションを置いたり、床にマットを敷いたりします。

  • 鋭い角のある家具や壊れやすい物は片付けます。

  • ベッドパートナーと別々に寝ることも検討されます。

・薬による治療

  • クロナゼパム(抗不安薬):寝る前に少量飲むことで、行動を抑える効果があります。

  • メラトニン(睡眠リズムを整えるホルモンに似た成分):体にやさしく、副作用が少ないため、高齢者にも使われることがあります。

・薬の見直し

  • 抗うつ薬などが症状を悪化させることがあるため、医師と相談して調整します。

・生活習慣の改善

  • お酒は控えめに(特に寝る前は避けましょう)

  • 決まった時間に寝て、しっかり休息を取ることが大切です

【RBDと長く付き合っていくには】 RBDは、ただの睡眠の問題ではなく、将来的にパーキンソン病や認知症に進行する可能性があります。だからこそ、今のうちに気づいておくことがとても大事です。

定期的に神経の専門医の診察を受けて、運動機能や記憶力などに変化がないかを確認してもらいましょう。将来の変化に早く気づくことで、治療や対策を早く始めることができるのです。

また、自分だけでなく、家族や友達にもこの知識を共有することで、誰かの健康を守るきっかけになるかもしれません。

【まとめ】 レム睡眠障害(RBD)は、夢の中の行動が現実に現れてしまう、ちょっと不思議で時に危険な睡眠障害です。でも、その行動の裏には、将来の大きな病気の兆しが隠れていることもあります。

もしも「夜中に暴れる」「寝言がすごい」「ベッドから落ちた」などの症状があるなら、一度、信頼できる大人や先生、医師に相談してみてください。

早く気づいて対応することが、将来の健康を守る大きな一歩になります。この記事が、あなたやあなたの大切な人の健康を考えるきっかけになれば幸いです。

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